JV(共同企業体)というワードは建設業許可の申請や経営事項審査の申請などにちらほらとみられます。いったいどのような制度で、どのような運用をするのか、また貴社に関係する項目なのか気になることもあるでしょう。
ここではその疑問を解消するためにわかりやすく簡単に説明していきたいと思います。
JVの団体性
JVというのは1つの建設工事を複数の建設業者で受注・施工する事業組織体とされています。つまり複数の建設業者が集まって「共同企業体協定書」なるものをつくって単発的に組織化しうるものです。永続的に結合をしようとするなら合併することになります。共同で契約や工事をしますが各々の企業の財布別々という感じです。
法的性格としては「民法上の組合」ということになります。
「民法上の組合」とは構成員の個性が強く、構成員の変更は予定されておらず逆からみると団体性が緩いということになります。構成員は権利と義務を連帯して出資割合に応じて負うことになります。(なんとなくのイメージでだいじょうぶ)
JVのメリット、デメリット
ここでなぜそのような共同体を作るのかまたメリット、デメリットについてみていきましょう。
メリット
- 大規模な工事を数多くの企業で協力して工事を行える。
- 災害や経営不振のリスク軽減
- 企業間の得意分野で工事ができる
- 資金力が上がるため大規模工事の受注力が上がる
デメリット
- 個別の企業で見るとやはり発注者に対して連帯して責任を負う
- 企業間のまとまりが必要
のような感じです。主に有利に働くのはスケールメリットによるものが大きいと思います。そして不利に働くのはお互いの企業が利益を追求するためぶつかってしまう可能性があることでしょう。
共同企業体の形態
共同企業体の形態には2パターンのカテゴライズのしかたがあります。
まずは一つ目のカテゴライズ方法は「単発の工事をのための共同体かそれ以外(経常的、一年くらい継続)の共同体か」という分け方になります。
・特定建設工事共同企業体(特定JV)
大規模で技術的な工事を単発で施工することを活用目的とした共同体です。工事完成後また受注できなかった場合は解散することになります。
・経常建設共同企業体(経常JV)
中小建設業者が、継続的に協力を確保しその経営力・施工力を強化する目的で結成する共同体。
主に競争入札申請において資格登録を受け、受注を目指します。
そして二つ目のカテゴライズは共同施工の方法(分担の仕方、方法)によるカテゴライズになります。
・甲型共同企業体
全構成員の定めた出資割合ごとに資金、人員、機械等を拠出する共同体。
利益配分、リスクのの負担など出資割合によります。
・乙型共同企業体
各構成員の間で請け負った工事をあらかじめ分割し、各構成員は、それぞれの分担したについて責任をもって施工する企業体。
それぞれの企業が得意または専門分野において施工します。
とはいえ各構成員は他の構成員における工事においても連帯して発注者に責任を負うことになります。
JVにおける技術者の配置
通常の場合(共同体としない場合)建設業法では下請け契約の額が4.000万円(建築一式工事の場合は6.000万円)以上となる場合、監理技術者を設置しなかればなりません。
また建設工事の請負代金の額が3.500万円(建築一式工事にあっては7.000万円)以上である場合又は公共性のある工事については、技術者は現場に専任の者でなければなりません。※改正があるかも
建設業許可を取得している業者は常態として主任技術者の設置が必要となります。
では、JVの場合はどうなるでしょうか?それは甲型(共同施工方式)と乙型(分担施工方式)の場合とで変わってきます。
では見てみましょう。
甲型(共同施工方式)の場合
結論から言いますと、4.000万円(建築一式工事の場合は6.000万円)以上の下請契約となる場合は特定建設業者たる構成員1社以上が監理技術者を設置しなければなりません。
また建設工事の請負代金の額が3.500万円(建築一式工事にあっては7.000万円)以上である場合又は公共性がある工事、監理技術者となった者は専任は出なければなりません。
そして特定建設業者である代表者が監理技術者を設置すれば、その他の構成員は、主任技術者を設置することで合法となります。
おさらいですが、甲型は簡単にいうと出資比率を基準とする考え方です。
つまり乙型(分担施工方式)に比べると団体としての結合が強いと考えられます。
共同企業体を一体とみて技術者を配置しています。
乙型(分担施工方式)の場合
ここでは少し注意が必要です。
1つの工事を複数の工区に分割し、各構成員がそれぞれ分担する工区で責任をもって施工する分担施工方式(乙型)にあっては、分担工事にかかる下請契約の額が4.000万円(建築一式工事の場合は6.000万円)以上となる場合には、当該分担工事を施工する特定建設業者は、監理技術者を設置しなければなりません。
そしてこちらも甲型(共同施工方式)同様、特定建設業者である代表者が監理技術者を設置すれば、その他の構成員は、主任技術者を設置することで合法となります。
また甲型(共同施工方式)と同様、建設工事の請負代金の額が3.500万円(建築一式工事にあっては7.000万円)以上である場合、監理技術者となった者は専任は出なければなりません。
乙型(分担施工方式)は団体としての結合が緩い感じです。
企業間で共同はするものの分担工事を各々が請け負うという感じです。
JVにおいて施工した工事実績と経営事項審査における完成工事高
JVにおける工事施工実績も単独企業で受ける経営事項審査の完成工事高(工事実績)として計上できます。
経営事項審査における完成工事高
甲型(共同施工方式)の場合…代金額に各構成員の出資割合を乗じた額
乙型(分担施工方式)の場合…運営委員会で定めた分担工事額
JVの工事で引き起こした労働災害の取り扱い
甲型(共同施工方式)の場合…全構成員の労働災害率に反映
乙型(分担施工方式)の場合…災害を引き起こした分担工事の担当構成員に限られる
JVにおける施工体制台帳、施工体系図の作成義務の取り扱い
まずJVでない場合を見てみましょう。
公共工事、民間工事問わず、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者で当該建設工事を施工するために締結した請負契約の総額が4.000万円(建築6.000万円)以上になるときは、施工体制台帳及び施工体系図を作成しなければなりません。
となります。
では、JVの場合は甲型(共同施工方式)と乙型(分担施工方式)でかわってきます。
甲型(共同施工方式)の場合
通常、代表者たる構成員が施工体制台帳、施工体系図を作成する義務を負います。
施工体制台帳に記載が必要な建設業者等の範囲は、工事の施工にかかるすべての建設業を営むもの
乙型(分担施工方式)の場合
分担された工区ごとに、当該工区の施工の責任を持つ構成員が施工体制台帳、施工体系図の作成義務を負う。
施工体制台帳に記載が必要な建設業者等の範囲は、当該分担工事の施工にかかるすべての建設業を営むもの
JVにおける建設業許可
JV(共同企業体)においては法人格がなく建設業の許可を取得することはできません。
その為、個々の構成員において許可を取得しておく必要があります。
ここでも甲型(共同施工方式)と乙型(分担施工方式)に分けて考えていくことにします。
甲型(共同施工方式)の場合
発注者から直接請け負った1件の工事について、その工事の全部または一部を、総額で4.000万円(建築一式工事の場合は6.000万円)以上となる下負契約を締結して施工しようとする場合には、代表者を含む1社が特定建設業許可を取っていることが必要
乙型(分担施工方式)の場合
発注者から直接請け負った1件の工事について、担当する工区に関する工事について、総額で4.000万円(建築一式工事の場合は6.000万円)以上となる下負契約を締結して施工しようとする場合には、その構成員は特定建設業の許可を有していることが必要