生活保護とは
生活保護を受給できる根拠
皆さん、日本に住んでおられる方は生活保護が受けられるのは当たり前に思われるかもしれません。しかし、諸外国ではそのようなことはありません。働きたくても働けなく路上で飢えていても誰も助けてくれない国は世界各国で多く存在します。(もしくは大半かもしれません。)そんな中で、なぜ日本では路上で飢えてれば少なくとも食料は最低限、国等から支給されます。その根拠は戦後GHQがつくった「日本国憲法」が源にあります。
「日本国憲法」(以下「憲法」とする。)は哲学、思想、道徳的な抽象的な法であり原則として日本国を治める最高の法ということができます。その中憲法には以下のような法があります。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
憲法25条の中でもとても有名な条文です。この条文がこそが「生存権」(個人の生存や生活の維持に必要な諸条件の確保を国家に要求することのできる権利)などと呼ばれ「日本という国は国民であれば飢えた人間は必ずを守る」という日本の思想だと思います。ただし、この条文だけでは生活保護が具体化されません。なので「生活保護法」というもう少し具体化された法を国会でつくられました。生活保護法は国が生活に困窮する国民に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度をいいます。
生活保護法の目的
生活保護制度を規定する生活保護法では、その目的を次の通り来てしています。
生活保護法第1条(目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
上記の生活保護法第1条の規定は、憲法の基本的人権(人間であればだれでも生まれながら当然に持っている基本的な権利)の一つである生存権の保障されるべき権利を規定したものです。ただし、国等も財源があり生活困窮者を保護するのにも限度があります。そこで単に生活困窮者に最低限度の生活を保障するだけではなく、生活困窮者に対して積極的にその自立を助長することとしています。
そして、生活保護法を基に生活保護施行令、施行規則等にどんどん具体化されていき最終的には社会福祉事務所がそれらの法や通知に従い各事例を判断していきます。
ここで一つ注意して頂きたいと思うことは社会福祉事務所の判断が絶対ではないということです。つまり、憲法25条からはじまり生活保護法、施行令、施行規則などを遵守されていない行政処分(ex.生活保護受給請求の却下)は違法になることです。現に社会福祉事務所の判断が覆されることは少なくはなりません。社会福祉事務所の裁量は大きいものでありますが、それゆえに処分の変更は起こり得ます。また、違法な生活保護受給者(生活困窮していない者)を排除するため厳しい審査を必要とするため間違いが生じやすいこともあります。
生活困窮の原因
生活保護受給の増加の主な原因は、非正規雇用の労働者や年収200万円以下の低賃金労働者の増大その他の所得格差の拡大による貧困層の増加にあります。
国民が生活に困窮する主な原因には、
①老齢により収入が亡くなった場合
②傷病による障害で収入がなくなった場合
③一家の働き手が死亡して収入がなくなった場合
がありますが、これらの場合には、
①老齢年金
②障害年金
③遺族年金
の各制度により救済される場合があります。
しかし、これらの年金制度に加入していなかった場合や年金額では不足する場合には、最後のセイフティネット(安全網)として生活保護制度による扶助しかありません。
生活保護は、年金その他の「社会保険」の制度とは異なり、生活に困窮する者に対して必要に応じて公的な一般財源(税金)から支出されることから「公的扶助」といわれます。社会保険の制度には、
①年金保険(一般的には65歳あたりで収入が亡くなった時にもらうのもの)
②医療保険(健康保険)(一般的には医療機関で受診した場合に3割負担6割は公費負担)
③雇用保険(一般的には失業時に支払われる金銭)
④労働者災害補償保険(労働の際、負傷した場合に支払われる金銭)
⑤介護保険(一定レベルの介護が必要な状態になった時に支給される金銭)
の各制度がありますが、いずれも加入者が制度運用の財源として保険料を必要があります。
しかし、年金保険や医療保険の保険料さえ貧困のため支払えないものが増加しています。
生活保護に要する費用は、全額を公費負担とし、国が4分の3を負担し、残りの4分の1は地方自治体(都道府県と市)が負担することとしています。地方自治体の負担は、町村は都道府県が全額負担、市は市が全額負担としています。

・生活保護の受給決定は社会福祉事務所の専権ではない法律に従って執行される。
・生活保護の受給相談はボランティア団体の方々でもいいが、生活保護法に詳しい法律家(弁護士、司法書士、行政書士)を探すのが好ましい。