最低限度の生活とは
最低限度の生活について、生活保護法第3条は「この法律により保証される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができる者でなければならない」としていますが、この規定は、憲法25条1項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として生存権の規定を根拠とするものです。つまり、最低限度の生活とは、「健康で文化的な生活水中を維持することができるもの」をいいます。
「健康で文化的な生活水準」について生活保護法第8条は次の通り規定していますが、結局、その基準は、「厚生労働大臣の定める基準」によることとされています。
①保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
②前項①の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。
憲法25条1項に規定する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」について、最高裁判所昭和42(1967)年5月24日判決は、次のように述べています。
「憲法25条1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられているものである。(中略)したがって、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生労働大臣の合目的的な裁量に任されており、その判断は、豆腐等の問題として政府の政治責任が問われることがあっても、直ちに違法の問題を奏ずることはない。」
この判決は傍論として述べたものですが、この理屈によると、憲法に保障した生存権はないに等しいことになってしまいます。
最低生活費の認定の実務
最低生活費の認定は、生活保護法第8条で「厚生労働大臣の定める基準」によることとされていますが、その実務は、厚生労働大臣の告示・事務次官通知・局長通知・課長通知・その他の多数の通知によって処理されています。生活保護の金額は、要保護者の世帯の総収入(賃金、年金、親族による援助その他の収入)とを比較し、要保護者世帯の収入が最低生活費に満たない場合に、その不足分が保護費となります。
保護費(不足分)=要保護者世帯の最低生活費ー要保護者世帯の総収入
最低生活費の認定は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他の保護の種類に応じたひちゅような事情を考慮するほか、要保護者の健康状態その他の個人又は世帯の実際の相違を考慮して認定することとされています。最低生活費は、①経常的最低生活費(食費、衣類、電気、ガス、水道の費用のような日常生活に必要な経常的な一般生活費)と②臨時的最低生活費(出産、入学、入院のような一時扶助費)に分けて認定されます。
経常的生活費は、要保護者の衣食孫田の月々の経常的な最低生活費の需要のすべてを満たすための費用として認定するものであり、被保護者は、経常的最低生活費の範囲内において、通常予測される生活需要はすべてさらまかうべきものであるととしています。更に、保護の実施機関は、保護の実施に当たり被保護者がこの趣旨を理解した事故の生活の維持向上につ終えるように指導することとしています。
臨時的最低生活費(一時扶助費)は、次に掲げる特別の需要のあるものについて、最低生活に必要不可欠な物資を書いて入りうと認められる場合であって、これらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合に限り臨時的に認定する者であるとしています。
①出産、入学、入退院等による臨時的な特別の需要(例えば、産着、おむつ、学童服の購入費用)
②日常生活の用事のできない長期療養者について臨時的に生じた特別の需要(例えば、紙おむつの購入費)
③新たに保護開始をする際等に最低生活の基盤となる物資を書いている場合の特別の需要(例えば、寝具類、台所用品の購入費)
最低生活費の認定に際しては「級地」基準が適用されます。級地は、全国を6区分にして支給額に差をつけています。