保護を受けているものの権利(生活保護法第56条)
不利益変更の禁止(生活保護法第56条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、正当な理由がなければ、すでに決定された保護を、不利益に変更されることはありません。この場合の「すでに決定された保護」には、保護の決定通知書の記載された保護の種類、程度及び方法のすべてが含まれています。この場合の「不利益」とは、被保護者の主観的な判断によるものではなく、客観的な判断によります。「変更」には、保護の種類、程度及び方法の変更のほか、保護の停止や廃止も含まれます。
②保護の変更には「正当な理由」が必要とされますから、変更をする場合には、生活保護法に規定された要件と手続きに従う必要があります。例えば、自治体の予算の不足を理由とする保護費の減額のような決定は認められません。
③被保護者に事情の変更があった場合(例えば、被保護者が失業した場合)には、保護の変更の申請は、保護開始の場合の申請権者(要保護者、扶養義務者、同居の親族)から申請しますが、その手続きは保護開始申請の場合と同様になります。(生活保護法第24条9項)
租税や公課の禁止(生活保護法第57条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、保護金品(保護として給与し又は貸与される金銭と物品)を標準として租税その他の公課を課せられることはありません。生活保護法に定める保護金品は、被保護者の最低限度の生活を保障するものですから、それを収入として課税することはできないとしているのです。租税とは、国税や地方税をいいます。公課とは、租税以外の自治体や国に対する金銭負担をいいます。
②租税や公課の禁止は生活保護法上の保護金品に限られますから、賃金収入や事業収入のような保護金品以外のものには課税されます。
差押えの禁止(生活保護法第58条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、すでにきゅよを受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押さえられることはありません。保護金品等が差し押さえらると最低限度の生活もできなくなるからです。
②生活保護費のような差し押さえ禁止の金銭とその他の金銭を同一の銀行口座にいしている場合は金融機関への預金債権として全部を一括して差し押さえることが可能であるとするのが実務の取り扱いとされていますから注意が必要です。
保護を受けている者の義務
保護等を受ける権利の譲渡の禁止(生活保護法第59条)
①保護又は就労時散る給付金を受ける権利は、これを譲渡することはできません。保護等を受ける権利は一身専属権(特定の者だけに帰属する権利)ですから、保護の実施機関が保護の種類・程度・方法を決定しているので他人への譲渡を禁止したのです。
②この譲渡禁止規定の趣旨は、保護の実施機関の決定した通りに、保護金品等が支給されないと、最低限度の生活ができなくなるからです。
生活上の義務(生活保護法第69条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の維持及び邁進に努め、収入、支出その他生活の維持及び向上に努めなければならないとされています。
②この規定は生活保護の需給の継続要件を日常生活上の義務の観点から規定したものですが、この規定に従わないと認められる場合は、福祉事務所長は、必要な指導又は指示をすることができます。
届け出の義務(生活保護法第61条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、収入、支出、その他生計の状況について変動があった場合又は居住地若しくは世帯の構成に異動があった場合には、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長に届け出る必要があります。
②この場合の収入とは、生活保護法上の給付以外の収入をいいます。生計状況とは、失業、就職、病気その他の生計に変動を及ぼす事実をいいます。届け出の方法は書面に限定されていませんから口頭でも差し支えありません。
指示等に従う義務(生活保護法第62条)
①被保護者(現に保護を受けている者)は、保護の実施機関が、居宅での保護ができないとして被保護者を救護施設、更生施設、その他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、若しくは詩人の家庭に用語を委託して保護を行うことを決定した場合、又は保護者に対し必要な指導又は指示をした場合には、これに従う必要があります。
②保護施設を利用する被保護者は、保護施設の管理者の定めた管理規程に従う必要があります。保護の実施機関は、被保護者が、上記①又は②の規定による義務に違反した場合は、保護の変更、停止又は廃止をすることができます。保護の変更、停止又は廃止をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与える必要があります。
費用返還義務(生活保護法第63条)
前述した通り被保護者(現に保護を受けている者)が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けた場合には、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還する必要があります。
その他の義務(生活保護法第28条1項)
①生活保護法に基づく福祉事務所職員の立ち入り調査に対する受忍義務
②生活保護法に基づく福祉事務所長の検診命令に対する受忍義務