生活扶助とは
生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、①衣食その他の日常生活の需要を満たすために必要なもの(一般生活費)と②移送(要保護者の輸送費用)の範囲内で行われます(生活保護法第第12条)。生活扶助は、8種類の扶助の中で最も基本的な扶助とされています。
「衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」として、衣類や飲食物の他に光熱費、家具什器、家賃、地代のような日常生活の需要を満たすものの給付が行われます。
「移送」とは、例えば、要保護者の高齢者を介護老人福祉施設に入所させる場合とか、保護施設の救護施設その他の施設に入所させる場合の要保護者の輸送費用をいいます。
生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとしています(居宅保護の原則)。ただし、例外的に、①居宅保護によることができない場合、②居宅保護によっては保護の目的を達しがたい場合、又は③被保護者が希望した場合には、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託して行うことができます(生活保護第30条1項)。
生活扶助は、金銭給付によって行います(金銭給付の原則)。ただし、例外的に、①これによることができない場合、②これによることが適当でない場合、③その他保護の目的を達するために必要がある場合には、現物給付によって行うことができます(生活保護法第31条1項)。
生活扶助の内容
生活扶助の内容は、①衣食のような個人単位の経費(第1類)、②光熱費のような世帯単位の経費(第2類)、③各種の加算の合計額となります。
①個人単位の経費(例えば、食費、衣服費)
②世帯単位の経費(例えば、光熱費、家具什器)
③各種の加算(例えば、妊産婦加算、障害者加算)
生活扶助その他の扶助の具体的な保護基準の金額は、厚生労働省の告示「生活保護法による保護の基準」として公表されていますが、毎年のように変更になります。最新の告示の保護基準を閲覧するには、公立図書館か大きい図書館で「現行法規総覧」(第一法規出版)の第10編(厚生)の「生活保護法による保護の基準」を閲覧するのが便利です。
生活扶助の各種の加算には、次の種類があります。
①妊産婦加算
②障害者加算
③介護施設入所者加算
④在宅患者加算
⑤放射線障害者加算
⑥児童養育加算
⑦介護保険料加算
⑧母子加算
記の②又は⑧について、同一の者がいずれの加算事由にも該当する場合は、いずれか高い加算額によります。
以上のほか次の費用が支給されます。
①期末一時扶助費(12月に支給され級地別・世帯人員別の金額となります)
②冬季加算(10又は11月から3又は4月までで地区別の金額となります)
③入院患者日用品費(被保護者が入院した場合)
④介護施設入所者基本生活費(被保護者が入所した場合)
⑤出生、入学、入院、退院等の特別の需要がのある場合の一時扶助費
生活扶助には「級地制」が適用されますから、例えば、2人世帯の期末一時扶助費の金額は6区分された地域によって次の通り異なります。
1級地-1 22,650円
1級地-2 21,620円
2級地-1 20,600円
2級地-2 19,590円
3級地-1 18,560円
3級地-2 17,540円
生活扶助の主な基準額
生活扶助基準その他の保護の基準は、厚生労働省の告示「生活保護法による保護の基準」として公表されていますが、毎年のように変更されています。第1類(個人単位の費用)と第2類(世帯単位の費用)の金額は、基準額①(旧基準)として公表されていますが、この場合に基準額②が基準額①の90%より少なくなる場合は、基準額②を「基準額①×90%」に置き換えて算定することとしています。
実際の支給金額の計算は、上記の「現行法規総覧」の「生活保護法による保護の基準」によるほか、厚生労働省の事務次官通知・局長通知・課長通知・その他の厖大な通知文書によってなされますから、保護申請者が正確に支給金額を計算することは困難です。仮に、保護の基準を満たさないとして申請書が却下されても、却下の理由が明確になりますから、先ずは保護申請書を提出することが大切です。
生活保護の基準生活費の月額は、6区分された「級地制」が採用されていますが、以下の金額は1級地ー1の場合の例(月額)を示していますので、他の級地ではこの金額より定額となります。
居宅の場合の第1類(個人単位の費用)の新基準(基準額②)の例は次の通りです。
0歳~2歳は26,660円
3歳~5歳は29,970円
6歳~11歳は34,390円
12歳~19歳は39,170円
20歳~40歳は38,430円
41歳~59歳は39,360円
60歳~69歳は38,990円
70歳以上は33,830円
居宅の場合の第2類(世帯単位の費用)の新基準(基準額②)の例は次の通りです。
世帯人員1人の場合は、40,800円
世帯人員2人の場合は、50,180円
世帯人員3人の場合は、59,170円
世帯人員4人の場合は、61,620円
世帯人員5人の場合は、65,690円
世帯人員6人の場合は、69,360円
世帯人員7人の場合は、72,220円
世帯人員8人の場合は、75,080円
世帯人員9人の場合は、77,940円
世帯人員10人以上の場合は、1人増すごとに2,860円を加算
冬季加算の金額は次の地域区分ごとに異なります。
Ⅰ区(10月から4月)北海道、青森県、秋田県
Ⅱ区(10月から4月)岩手県、山形県、新潟県
Ⅲ区(11月から4月)宮城県、福島県、富山県、長野県
Ⅳ区(11月から4月)石川県、福井県
Ⅴ区(11月から3月)栃木県、群馬県、山梨県、岐阜県、鳥取県、島根県
Ⅵ区(11月から3月)その他の都府県
居宅の期末一時扶助費の1級地ー1の場合は次の通りです。
世帯人員1人の場合は、13,890円
世帯人員2人の場合は、22,650円
世帯人員3人の場合は、23,340円
世帯人員4人の場合は、26,260円
世帯人員5人の場合は、27,370円
世帯人員6人の場合は、31,120円
世帯人員7人の場合は、33,060円
世帯人員8人の場合は、35,010円
世帯人員9人の場合は、36,670円
世帯人員10人以上の場合は、1人増すごとに1,670円を加算
主な加算基準額
妊産婦加算の月額(1級地)は次の通りです。
①妊娠6か月未満の妊婦は8,960円
②妊娠6カ月以上の妊婦は13,530円
③産婦は8,320円
(2)障碍者加算の月額(1級地)は次の通りです。
①障害の程度により、在宅者は26,310円又は17,530円
②障害の程度により、入院又は施設入所者は21,890円又は14,590円
(3)児童養育加算の月額は次の通りです。
①第1子及び第2子で3歳未満の児童は15,000円
②第1子及び第2子で3歳以上中学校修了前の者にはの児童は10,000円
③第3子以降で小学校終了前の児童は15,000円
④第3子以降で小学校終了後中学校終了前の者には10,000円
(4)母子加算の月額(1級地)は次の通りです。
①児童1人の場合では在宅者は22,790円、入院・入所者は18,990円
②児童2人の場合に加える額は在宅者1,800円、入院・入所者は1,530円
③児童3人以上1人増すごとに加える額は在宅者は920円、入院・入所者750円
母子加算又は障碍者加算について同一人が両方に該当する場合は、いずれか高額の加算額のみとされます。