1-1-6.相続税の基本|基礎控除・配偶者控除・小規模宅地等の特例をやさしく解説

相続税申告の必要性を確認する

※相続税はとても専門的で細かい制度です。
ここでは、相続税の基本的な仕組みを理解することを目的として概要を説明します。
詳しい計算方法などについては、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

基礎控除額を超える場合は10か月以内に申告

相続税は、すべての相続で必ず発生するわけではありません。

相続税は次のような計算で判断されます。

まず、

相続税の対象となる財産の合計額

から

  • 被相続人の借金(債務)
  • 葬儀費用

などを差し引きます。

これを正味の遺産額といいます。

そして、この正味の遺産額から基礎控除額を引いた残りに税率をかけて、相続税が計算されます。

つまり、

正味の遺産額が基礎控除額以下の場合は相続税は発生しません。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は、次の計算式で決まります。

3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)

例えば

  • 相続人が1人 → 3,600万円
  • 相続人が2人 → 4,200万円
  • 相続人が3人 → 4,800万円

というように、相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増えていきます。

もし正味の遺産額がこの基礎控除額を超える場合は、

相続開始を知った日の翌日から10か月以内

に相続税の申告と納税を行う必要があります。

実際には計算が複雑なため、多くの場合は税理士に依頼することになります。

相続税が課税される主な財産

相続税の対象となる財産には、次のようなものがあります。

  • 不動産
  • 有価証券
  • 預貯金
  • 現金
  • 自動車や貴金属などの動産
  • 死亡保険金(保険料を被相続人が負担していたもの)
  • 死亡退職金(非課税枠を超える部分)
  • 相続時精算課税制度を利用した贈与財産

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、

60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合

に利用できる制度です。

この制度を利用すると、

最大2,500万円までの贈与について贈与税がかかりません。

ただし、この制度を利用して贈与された財産は、
贈与した人が亡くなったときに相続税の対象として計算されます。

なお、この制度を利用した場合でも、

年間110万円までの基礎控除

があります。

この110万円までの贈与については、将来の相続税の対象にはなりません。

制度を利用するためには、贈与の際に

相続時精算課税選択届出書

を税務署へ提出する必要があります。

暦年贈与と相続税

贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。
この範囲内で毎年贈与を行うことを暦年贈与といいます。

ただし、相続開始前の一定期間に行われた贈与は、相続税の対象になります。

現在は

相続開始前3年以内の贈与

が対象です。

さらに、制度改正により

2031年以降は7年以内の贈与

が相続税の対象となります。

配偶者の税額軽減

配偶者には大きな控除がある

被相続人の配偶者には、相続税の大きな軽減制度があります。

配偶者が相続する財産については、

1億6,000万円

または

法定相続分

のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。

ただし、この制度を利用するためには、

相続開始から10か月以内に相続税の申告を行う必要があります。

二次相続を考えることが大切

配偶者控除は非常に大きな制度ですが、
財産をすべて配偶者に相続させると、将来の相続で税金が増えることがあります。

これを二次相続といいます。

二次相続とは、

夫が亡くなり妻が相続した後、
その妻が亡くなったときに起こる相続のことです。

例えば

父の遺産:1億円
相続人:母+子2人

この場合、

母がすべて相続すれば配偶者控除により相続税は0円になります。

しかし、その後母が亡くなると、

母の財産
・元々の財産 3,000万円
・父からの相続 1億円

合計 1億3,000万円

となります。

このとき相続人は子ども2人だけになります。

基礎控除は

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

となるため、課税対象が大きくなり、結果として相続税が高くなることがあります。

このように、相続税は

一次相続と二次相続を合わせて考えることが重要

です。

実際の対策は非常に複雑なため、相続税に詳しい税理士に相談するのが安心です。

小規模宅地等の特例

土地の評価額を最大80%減額できる制度

小規模宅地等の特例とは、

被相続人が住んでいた自宅や事業用の土地の相続税評価額を大きく減額できる制度

です。

自宅の土地については、

330㎡までの部分を最大80%減額

することができます。


自宅の土地に適用される人

次の人が土地を取得した場合に適用されます。

① 被相続人の配偶者
② 被相続人と同居していた親族
③ 配偶者や同居親族がいない場合の別居親族(一定の条件あり)

ただし、

  • 相続税申告期限まで土地を持ち続ける
  • 同居親族の場合はそのまま住み続ける

などの条件があります。

事業用の土地

事業に使っていた土地については、

最大200㎡まで50%減額

することができます。

ただし、

  • 相続人が事業を引き継ぐこと
  • 申告期限まで土地を保有すること

などの条件があります。

Q 小規模宅地等の特例を使うと税金がゼロでも申告は必要?

A

小規模宅地等の特例を利用する場合は、
相続税が発生しなくても申告が必要です。

また、この特例を利用するためには

申告期限(10か月以内)までに遺産分割が完了していること

が必要です。

なお、この制度は条件が非常に複雑なため、
実際に適用できるかどうかは税理士に確認することをおすすめします。

POINT

・相続税は基礎控除額を超える場合に発生する
・相続税の申告期限は相続開始から10か月以内
・配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで非課税
・小規模宅地等の特例で土地の評価額を最大80%減額できる
・特例を使う場合でも相続税申告は必要