1.不動産を相続させる
遺言書で不動産を相続させる場合の書き方
遺言書で不動産を相続させる場合は、どのように不動産を記載するかがとても重要です。
書き方を間違えると、将来の相続手続きや相続登記に支障が出る可能性があります。
ここでは、不動産の記載方法についてわかりやすく説明します。
すべての不動産を相続させる場合の書き方
遺言者が持っているすべての不動産を、特定の相続人に相続させたい場合は、不動産を一つ一つ記載せずに
「遺言者の有する一切の不動産を〇〇に相続させる」
と記載する方法があります。
この書き方には、いくつかのメリットがあります。
まず、不動産を細かく書く必要がないため、記載ミスを防ぐことができます。
不動産の表示を間違えてしまうと、将来の相続登記ができなくなる可能性があります。
また、この書き方をしておけば、遺言書を作成した後に新しく購入した不動産も相続の対象に含まれることになります。
そのため、すべての不動産を同じ人に相続させる場合は、「一切の不動産」とまとめて記載する方法が実務上よく使われます。
不動産を特定して相続させる場合の書き方
一方で、特定の不動産を特定の人に相続させたい場合には、不動産を個別に記載する必要があります。
この場合は、必ず登記事項証明書の内容どおりに正確に記載することが大切です。
登記事項証明書とは、土地や建物について次のような情報が記載されている書類です。
- 所在地
- 地番
- 家屋番号
- 面積
- 所有者
これらの情報は、法務局の登記記録に基づく正式な情報です。
遺言書に不動産を記載するときは、この登記事項証明書の内容をそのまま写すように記載すると安全です。
もし不正確な表記になってしまうと、相続登記の際に問題が生じる可能性があります。
固定資産税の書類だけで判断しない
不動産の情報は、固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書にも記載されています。
しかし、これらの書類に書かれている内容は、登記の内容と完全に一致していない場合があります。
たとえば次のようなケースです。
- 未登記の増築部分がある
- 登記と固定資産の表示方法が違う
- 地番の表示が異なる
このような理由で、固定資産税の書類だけを参考にして遺言書を書くと、登記情報と一致しない可能性があります。
そのため、不動産を正確に記載する場合は、必ず登記事項証明書を取得して確認することが大切です。
登記事項証明書の取得方法
登記事項証明書は、法務局で取得することができます。
申請する際には、次の情報が必要になります。
- 土地の場合:地番
- 建物の場合:家屋番号
これらの情報は、次の書類から確認することができます。
- 固定資産税納税通知書(毎年4月~6月ごろに送付される)
- 市区町村役場で取得できる名寄帳(なよせちょう)
名寄帳には、その人が所有している不動産の情報がまとめて記載されています。
不動産の所在地や地番を確認する際に役立つ書類です。
共同担保目録も確認しておく
登記事項証明書を取得するときは、共同担保目録付きで請求することもおすすめです。
共同担保目録とは、同じ担保に入っている不動産が一覧で記載されている書類です。
これを見ることで、次のような情報を確認できます。
- 他に担保に入っている不動産
- すでに抹消された担保
共同担保目録を確認することで、見落としている不動産がないかを確認できる場合があります。
請求するときは、
「共同担保目録 全部(抹消含む)」
にチェックを入れて申請すると、すでに抹消された情報も含めて確認することができます。
●全部の不動産を1人に相続させる文例
第〇条 遺言者は、*1遺言者の有する一切の不動産を、遺言書の長男川越一郎(昭和〇年〇月〇日生)に*2相続させる。
*1…「遺言者の有する一切の不動産」と記載すれば、相続開始時に遺言者が待っているすべての不動産が対象となる。
*2…相続人に対しては、基本的に、「相続させる」をいう文言を使用する。
●土地建物を特定して相続させる文例
第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の*1長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
所 在 東京都〇〇区○○
地 番 ○番地
地 目 宅地
地 積 150.00㎡
第〇条 遺言者は、遺言者の有する*2下記不動産を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
記
所 在 東京都○○区○○番地
家屋番号 ○番〇
種 類 居宅
構 造 木造かわらぶき2階建 *3
床 面 積 1階 60.00㎡
2階 60.00㎡
*1…相続人は続柄、氏名、生年月日などで特定。2回目以降は「前記」と記載すればよい。
*2…「下記建物及び下記建物内に存する一切の動産を」と記載すれば、建物内の家財道具などの動産も一緒に相続させられる。
*3…不動産を特定して相続させる場合、登記事項証明書を取得し、正確に記載する。
2.マンションを相続させる
区分建物とは
マンションやビルの中には、建物全体ではなく一室ごとに所有できる建物があります。
このように、建物の中で構造的に独立していて、それぞれが住居や店舗、事務所などとして利用できる部分を「区分建物」といいます。
たとえば、次のようなものが区分建物です。
- マンションの一室
- 分譲オフィスビルの事務所
- 分譲店舗
区分建物は、建物全体とは別に一つの不動産として登記されているため、遺言書で相続させる場合も、通常の土地や建物とは少し違った書き方が必要になります。
区分建物を遺言書に記載する方法
区分建物を遺言書に記載する場合は、まず法務局で登記事項証明書を取得します。
そして、登記事項証明書の内容どおりに正確に記載することが大切です。
一般的に、次の内容を記載します。
- 一棟の建物の表示
- 専有部分の建物の表示
- 敷地権の目的である土地の表示
- 敷地権の表示
これらはすべて、登記事項証明書に記載されています。
遺言書には、その内容を省略せず、登記の通りに記載することが重要です。
もし記載内容が不正確だと、将来、相続登記の手続きができなくなる可能性があります。
敷地権の表示がない場合
区分建物の登記事項証明書を確認したとき、敷地権に関する記載がない場合があります。
このような場合は、土地の登記事項証明書も取得して確認してみましょう。
もし土地の登記簿において、共有者として登記されている場合は、その土地についても相続の対象になります。
そのため、土地についても遺言書に記載しておく必要があります。
マンションの一室だけでなく、土地の持ち分も一緒に所有しているケースがあるため、注意が必要です。
マンションの規約共用部分について
マンションでは、住戸以外にも共用施設が存在します。
たとえば、次のようなものです。
- 集会所
- 管理人室
- ポンプ室
- ごみ置き場
- 駐車場
固定資産評価証明書や名寄帳を取得すると、これらの施設について家屋番号が記載されている場合があります。
このような記載がある場合は、念のためそれぞれの登記事項証明書を取得して確認すると安心です。
登記事項証明書に
「〇年〇月〇日 規約設定 共用部分」
といった記載がある場合は、マンションの共用部分として扱われているため、通常は個別に遺言書へ記載する必要はありません。
共用部分を持ち分で所有している場合
一方で、登記事項証明書に共用部分の記載がない場合には注意が必要です。
その場合は、登記事項証明書の
「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」
を確認します。
もしそこに持ち分で所有していることが記載されている場合は、その建物や施設も相続財産になります。
この場合は、次のような施設についても遺言書に記載しておく必要があります。
- 集会所
- 管理人室
- 駐車場
- ごみ置き場
- その他の共用施設
マンションでは、このような共用施設の持ち分を所有しているケースもあるため、登記事項証明書を確認しておくことが大切です。
まとめ
区分建物を遺言書に記載する場合は、通常の土地や建物よりも注意する点が多くあります。
特に次の点を確認しておくことが重要です。
- 登記事項証明書を取得し、登記どおりに記載する
- 敷地権の有無を確認する
- 必要に応じて土地の登記も確認する
- 共用部分や持ち分の有無を確認する
これらを事前に確認しておくことで、将来の相続手続きや相続登記をスムーズに進めることができます。
●区分建物(敷地権登記あり)を相続させる文例
第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、遺言者の長女○○○○(昭和〇年〇年〇日生)に相続させる。
記
(*1一棟の建物の表示)
所 在 東京都○○区 ○○番地
建物の名称 ○○マンション
(*1専有部分の建物の表示)
家 屋 番 号 ○○○○ ○番地
建物の名称 ○○
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造1階建
床 面 積 〇階部分 60.00㎡
(*1敷地権の目的である土地の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 ○○県○○市○○番地
地 目 宅地
地 積 400.00㎡
(*1敷地権の表示)
土地の符号 1
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1万分の125
*1…区分建物の場合は、「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の目的である土地の表示」「敷地権の表示」を登記事項証明書の通りに記載しする。
*2…建物の登記事項証明書に敷地権に関する情報が記載されていない場合、土地の登記事項証明書の取得する。
敷地権登記なしで土地を所有している場合
敷地権の登記なく土地を持分で所有している場合は、区分建物の「一棟の建物の表示」と、「専有部分の建物の表示」を記載し、土地の「所在」「地番」「地目」「地積」「遺言者の持分」を記載します。
- 敷地権…区分建物を所有するための敷地の利用権を投棄したもので、区分建物と分離して処分できない。
- 不動産の表記に間違いがあると、将来、相続登記ができない可能性がありますので正確に記載しましょう。
・マンションの一室などのように構造上独立して住居などに使えるものを区分建物をいう
・区分建物の敷地権の有無を登記事項証明書で確認する
3.不動産を複数の相続に共有で相続させる
不動産を持分割合で相続させる場合
遺言書では、不動産を1人の相続人に相続させるだけでなく、複数の相続人に割合を決めて相続させることもできます。
たとえば、次のような書き方です。
- 「〇〇市〇〇町〇番地の土地を、Aに3分の2、Bに3分の1の持分割合で相続させる」
- 「〇〇市〇〇町〇番地の建物を、AとBに各2分の1の割合で相続させる」
このように、不動産を持分割合で分けて相続させることができます。
特に、相続人が複数いる場合や、不動産を公平に分けたい場合などに使われる方法です。
ただし、不動産を共有の形で相続すると、将来問題になることもあります。
不動産を共有にする場合の注意点
不動産を複数人で共有すると、次のような問題が起こる可能性があります。
たとえば、その後さらに相続が起きると、共有者がどんどん増えていくことがあります。
その結果、不動産の所有者が何人もいる状態になり、次のような問題が起こることがあります。
- 売却したくても全員の同意が必要になる
- 管理方法について意見がまとまらない
- 相続を繰り返すことで権利関係が複雑になる
このような理由から、不動産を共有で相続させる方法は、できるだけ避けた方がよいといわれています。
可能であれば、
「特定の不動産は1人が相続する」
「別の財産で調整する」
といった方法を検討することも大切です。
遺言者が不動産の持分を持っている場合
遺言者が不動産を単独で所有しているのではなく、持分だけを持っている場合もあります。
たとえば、兄弟や親族と一緒に不動産を共有しているケースなどです。
このような場合、遺言書には持分割合を記載しておくことが大切です。
たとえば、次のような書き方になります。
- 「〇〇市〇〇町〇番地の土地について、遺言者の持分2分の1をAに相続させる」
このように、遺言者が持っている持分の割合を明確にして記載します。
将来持分が増える可能性がある場合
遺言書を作成したあとに、遺言者の持分が増える可能性もあります。
たとえば、
- 他の共有者から持分を買い取る
- 相続によって持分が増える
といったケースです。
もし、将来増えた持分も同じ相続人に相続させたい場合は、そのことも考えて遺言書を書いておくと安心です。
たとえば、次のような書き方があります。
- 「その有する権利が持分であるときは持分の全部を相続させる」
- 「遺言者の現在持分〇分の〇を相続させる」
このように書いておくことで、後から持分が増えた場合でも、同じ相続人に引き継がれる可能性が高くなります。
持分割合の確認方法
遺言者がどのくらいの持分を持っているかを確認するには、不動産の登記事項証明書を取得します。
登記事項証明書には、不動産の所有者の情報が記載されています。
具体的には、
「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」
という欄に、
- 所有者の住所
- 所有者の氏名
- 持分割合
などが記載されています。
この情報を確認することで、遺言者がどのくらいの割合の権利を持っているのかを正確に把握することができます。
遺言書を書くときは、この登記事項証明書の内容を確認し、正確に記載することが大切です。
ポイント
- 不動産は複数の相続人に一定の割合で相続させることも可能
- 遺言者が不動産の持分を持っている場合は持分割合を記載する
- 将来持分が増える可能性を考えて遺言書の内容を工夫する
これらを意識して遺言書を作成することで、将来の相続手続きをよりスムーズに進めることができます。

