1-1-5.不動産・預貯金・株式の相続手続きの流れ|相続放棄と限定承認も解説

不動産・預貯金の相続手続き

不動産の相続登記(名義変更)

遺言書がない場合、不動産の相続手続きを行うには、まず相続人であることを証明する必要があります。

そのために、次のような書類を準備します。

  • 戸籍謄本一式
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 住民票(必要な場合)

これらの書類をそろえて、**法務局で相続登記(所有権移転登記)**の申請を行います。

相続登記とは、亡くなった人(被相続人)から相続人へ、不動産の名義を変更する手続きです。

相続登記は一般の方でも行うことは可能ですが、申請書の作成などには法律や事務の知識が必要になります。
普段からパソコンのオフィスソフトなどを使い慣れている人でないと、難しく感じることもあるでしょう。

なお、登記申請の代理業務は弁護士と司法書士の専属業務です。

その中でも、不動産登記を専門としているのが司法書士です。
手続きに不安がある場合は、司法書士へ依頼することも検討するとよいでしょう。

預貯金や上場株式の相続手続き

預貯金の相続手続き

銀行口座の名義人が亡くなった場合は、まず金融機関へ連絡をしましょう。

通帳の表紙の裏などには、支店の電話番号が記載されています。
電話で次のように伝えれば大丈夫です。

「口座の名義人が亡くなったので、相続手続きを教えてください。」

預貯金の相続手続きでは、最初に金融機関へ問い合わせることがとても大切です。

なぜなら、金融機関によって手続きの方法が異なるからです。

例えば

  • 郵送で手続きできる銀行
  • 店舗での手続きが必要な銀行

など、銀行ごとにルールが違うことがあります。

A銀行では問題なく手続きできた方法でも、B銀行では別の書類が必要になることもあります。
そのため、事前に必要書類をよく確認することが重要です。

とはいえ、基本的には次の書類が必要になるケースが多いです。

  • 遺産分割協議書(銀行指定の様式)
  • 戸籍謄本
  • 印鑑証明書

店舗で手続きをする場合は、予約が必要かどうかも確認しておきましょう。

上場株式の相続手続き

株式を相続する場合も、まず証券会社や信託銀行などの管理先に連絡します。

電話で次のように伝えます。

「株式を持っている人が亡くなったので、相続手続きをしたいです。」

上場株式を相続する場合、株式は相続人名義の証券口座に移す必要があります。

たとえ株式を売却する場合でも、

一度相続人の口座に移してから
売却する

という流れになります。

そのため、相続人に証券口座がない場合は、新しく口座を開設する必要があります。

その後は、証券会社の指示に従い、

  • 所定の書類に記入
  • 必要書類の提出

などの手続きを行います。

Q 印鑑証明書に有効期限はある?

相続手続きで使う印鑑証明書について、よくある質問があります。

Q 印鑑証明書に有効期限はありますか?

A

不動産の相続登記で使用する場合、
遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には法律上の有効期限はありません。

ただし、預貯金の相続手続きでは注意が必要です。

金融機関によって

  • 発行から3か月以内
  • 発行から6か月以内

などの独自ルールがあることがあります。

そのため、銀行で手続きをする場合は、事前に期限を確認しておきましょう。

被相続人に借金があった場合

相続放棄は3か月以内に行う

相続では、預金や不動産などの財産だけでなく、借金などの負債も相続の対象になります。

もし

  • 借金の方が多い
  • マイナスの財産の方が多い

ことが明らかな場合は、相続放棄を検討します。

相続放棄をすると、その人は

はじめから相続人ではなかったもの

として扱われます。

そのため

  • 借金も相続しない
  • プラスの財産も相続しない

ということになります。

相続放棄は、

「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内

に家庭裁判所へ申立てを行います。

ここでいう「知った時」とは

  • 被相続人が亡くなったことを知った
  • 自分が相続人であると認識した

この2つを指します。

3か月を過ぎて借金が見つかった場合

被相続人には財産がないと思っていたのに、
3か月を過ぎてから借金の請求が届くこともあります。

この場合でも、

借金を知ってから3か月以内

であれば、相続放棄が認められる可能性があります。

そのため、請求書などが届いた場合は、
すぐに司法書士などの専門家へ相談することが重要です。

なお、債権者からの請求書は
封筒も含めて保管しておきましょう。

相続するならやってはいけないこと

相続放棄を考えている場合は、相続財産を勝手に処分してはいけません。

例えば

  • 宝石を売ってしまう
  • 財産を使ってしまう

などの行為をすると、

相続を認めた(単純承認)

と判断される可能性があります。

その場合、相続放棄ができなくなることがあります。

ただし、例外として

保存行為

と呼ばれる行為であれば、相続放棄が認められる場合があります。

例えば

  • 商売の商品が腐る前に売却する
  • 財産価値がなくなる前に処分する

といった行為です。

しかし、保存行為かどうかの判断は難しいため、
迷う場合は処分しないのが安全です。

葬儀費用の支払いにも注意

相続財産から葬儀費用を支払う場合も注意が必要です。

通常の範囲であれば問題ありませんが、
不相当に高額な場合は処分と判断される可能性があります。

また、相続放棄をした後でも

  • 相続財産を隠す
  • 勝手に処分する

といった行為は認められていません。

遺産放棄との違い

遺産分割協議で

「遺産を一切もらわない」

と決めることを、一般的に遺産放棄と呼ぶことがあります。

しかし、この場合でも法律上は相続人のままです。

そのため、被相続人の借金について

法定相続分の割合で請求される可能性があります。

借金を相続したくない場合は、
必ず家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。

限定承認という方法

もう一つの方法として、限定承認という制度があります。

限定承認とは、

相続した財産の範囲内でのみ借金を返済する

という相続方法です。

つまり、相続財産を超える借金については支払う必要がありません。

限定承認をする場合も、

相続開始を知ってから3か月以内

に家庭裁判所へ申し立てます。

また、相続人が複数いる場合は、
相続人全員で共同して手続きを行う必要があります。

ただし、限定承認の手続きは非常に複雑なため、
弁護士へ依頼するケースが多い手続きです。