遺言書の必要性
遺言書がないと相続手続きが進まないことがある
人が亡くなると、その人が持っていた財産は家族などに引き継がれます。
これを相続といいます。
しかし、遺言書がない場合は、相続人全員で話し合いをして「誰がどの財産をもらうのか」を決めなければなりません。
この話し合いを遺産分割協議といいます。
相続人が2人や3人程度であれば、比較的スムーズに話し合いがまとまることもあります。
しかし、相続人の人数が多い場合や、相続人同士の関係があまり良くない場合は、話し合いが長引いたり、まとまらなかったりすることもあります。
そして、この遺産分割協議がまとまらないと、次のような相続手続きを進めることができません。
・不動産の名義変更
・銀行の預貯金の解約や名義変更
・株式などの名義変更
これらの手続きを行うためには、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書と、印鑑証明書を提出する必要があるからです。
一方で、遺言書がある場合は、その内容にしたがって相続手続きを進めることができます。
そのため、多くの場合は遺産分割協議をする必要がなくなり、相続手続きをスムーズに進めることができます。
このように、遺言書は相続手続きを円滑に進めるために、とても大切な役割を持っています。
遺言書を作ったほうがよいケース
次のような場合は、遺言書を作っておいたほうがよいといえます。
・相続人同士の仲があまり良くない場合
・相続人の人数が多い場合
・面識のない相続人がいる場合
また、そもそも遺産分割の話し合いができない場合もあります。
例えば、次のようなケースです。
・相続人が認知症で判断が難しい場合
・相続人が未成年である場合
・相続人の行方がわからない場合
このような場合は、家庭裁判所で代理人を選んでもらう必要があります。
例えば、
・認知症の人がいる場合 → 成年後見人
・未成年者がいる場合 → 特別代理人
・行方不明者がいる場合 → 不在者財産管理人
などです。
このような手続きは時間もかかり、手続きも複雑になります。
しかし、遺言書があれば、このような問題を避けられることも多くあります。
相続人でない人に財産を渡したい場合
遺言書が特に重要になるのは、相続人ではない人に財産を渡したい場合です。
例えば次のようなケースです。
・内縁の配偶者
・長年介護してくれた人
・お世話になった友人
このような人は、法律上の相続人ではありません。
そのため、遺言書がなければ財産を渡すことができません。
また、相続人がいない場合、遺言書がないと財産が最終的に国のものになる可能性もあります。
このような理由からも、遺言書を作っておくことはとても重要です。
遺言書を作るときの基本ルール
遺言書には、いくつか基本的なルールがあります。
・15歳以上であれば遺言を作ることができる
・遺言の内容を理解できる能力(遺言能力)が必要
・遺言書は何度でも作り直すことができる
例えば、財産の状況や家族の状況が変わった場合は、新しく遺言書を作り直すこともできます。
新しい遺言書を作ると、基本的には新しい遺言書が優先されます。
また、認知症などで判断能力が低下している場合は、遺言能力があるかどうかが問題になることがあります。
そのため、心配な場合は専門家や医師に相談することが大切です。
遺言書が特に必要になる主なケース
遺言書があると安心なケースはいくつもあります。
子どもがいない夫婦
子どもがいない場合、配偶者だけでなく、被相続人の親や兄弟姉妹も相続人になることがあります。
そのため、遺された配偶者はこれらの人と遺産分割の話し合いをしなければならなくなります。
前の結婚の子どもがいる場合
離婚していて前の結婚の子どもがいる場合、その子も相続人になります。
連絡が取れない場合などには、手続きが難しくなることがあります。
認知症・未成年・行方不明の相続人がいる場合
この場合は家庭裁判所で代理人を選ばなければならず、手続きが複雑になります。
相続人同士の仲が悪い場合
話し合いがまとまらないと、家庭裁判所で遺産分割調停や審判になる可能性があります。
相続人の人数が多い場合
兄弟姉妹が相続人になる場合は、その子である甥や姪も相続人になることがあります。
その結果、相続人の人数がとても多くなることもあります。
主な財産が自宅しかない場合
自宅に住んでいる人がいる場合でも、他の相続人から「家を売ってお金を分けよう」と言われることがあります。
そのため、誰が自宅を相続するのかを遺言書で決めておくと安心です。
遺言書でできること
遺言書には、法律の効力がある内容と、法律の効力がない内容があります。
法律の効力があるものを法定遺言事項といいます。
法定遺言事項は、次の4つに分けることができます。
① 相続に関すること
② 遺産の処分に関すること
③ 身分に関すること
④ 遺言執行に関すること
相続に関すること
遺言書では、どの相続人にどの財産を相続させるかを決めることができます。
また、法律で決められている相続の割合とは違う割合で相続分を指定することもできます。
ただし、一定の相続人には遺留分という最低限の取り分があります。
また、仏壇や位牌、お墓などの祭祀財産を受け継ぐ人を決めることもできます。
遺産の処分に関すること
遺言書では、財産を無償で渡すこともできます。
これを**遺贈(いぞう)**といいます。
例えば、
・内縁の配偶者
・お世話になった友人
・支援している団体
などに財産を渡すことができます。
身分に関すること
遺言書では、婚姻していない男女の間に生まれた子どもを認知することもできます。
認知された子どもは、法律上の子どもとして相続人になります。
遺言執行に関すること
遺言書の内容を実行する人を遺言執行者といいます。
遺言執行者を決めておくと、相続手続きをスムーズに進めることができます。
相続人の協力が得られない場合でも、遺言の内容を実現しやすくなります。
法律の効力がない内容(付言事項)
遺言書には、法律の効力がない内容を書くこともできます。
これを付言事項といいます。
例えば、
・家族への感謝の言葉
・なぜこのような分け方にしたのかという理由
・葬儀の希望
・臓器提供などの希望
などを書くことができます。
付言事項には法律の効力はありませんが、家族の理解を得るために大きな意味を持つことがあります。

