5-1-3.自筆証書遺言における保管制度の注意点とよく使われる遺言方式の比較

遺言書の保管制度を利用する時の注意点

 一見、自筆証書遺言保管制度を利用すれば保管できない今までの自筆遺言証書や公正証書遺言の欠点が補完されたようにも思えます。

 しかし、欠点がないわけではありません。

 それではこれらの制度を詳細に見ていき、メリットデメリットには注意しましょう。

そもそもな遺言制度とは

 もう一度原点に振り返って遺言制度とはどのようなものだったか思い出しましょう。

 遺言者の死後、遺言者の最後の意思を伝えるためのものです。

 そして、遺言執行義務者に遺言書通りに実行してもらうためにします。

 しかし、遺言書が裁判所に持ち込まれた遺言者の真意をくみ取ってくれないものは意味を成しません。

 最終判断の決定を行う裁判所(最高裁判所)が真意をくみ取ってくれてこそ完成された遺言となります。

 人が遺言書を作成するのは、自分の思いを形にし、その内容を自らの死後に実現させたいためです。遺言者からすれば、遺言書はその内容が実現しなければ、遺言書はその内容が実現しなければ意味がないのです。

 遺言者は、当然ですが、自らが作成した遺言書が有効であることを期待します。そして死後、遺言書に基づいて相続手続きがスムーズに進むことまで期待するでしょう。遺言者からすれば、これらがそろって初めて「完璧な遺言」なのです。

遺言書保管制度の注意点

 一般的に国家を代表する法務局に預けたのだから裁判所でも否定されることはないと思いがちです。

 しかしそれは大きな間違いです。

 法務局は遺言書の内容を一切関与しないことが原則です。

 つまり、最終的に遺言書の訴訟が行われた場合、

 「法務局に保管していた遺言書だから遺言書に不備は何もない。」

 と主張しても裁判所は意に関せず遺言書を無効にしてしまうことにもなります。

 これについては公正証書遺言も同じようなことが言えます。

 (公証人は遺言の内容などを保証はしないが現実的には法律のプロフェッショナルなので不備は指摘してくれることがある。それにかんがみて銀行などは原則として公正証書遺言を有効な書類と認める。)

 公正証書遺言は絶対ではないがかなり高い割合で真正性の高い遺言書となりそれに比べると法務局に保管されていた自筆証書遺言は真正性が低いものと言えることになります。

現実的な遺言の方式は3種類

 法律上、普通方式が3種類、特別方式が4種類ありますが現実的には下記に3種類の遺言方式が主となります。

①自筆証書遺言(自己保管型(法務局に保管を依頼しない))

②公正証書遺言

③自筆証書遺言(遺言書保管所型(法務局に保管を依頼する))

 となります。

 遺言書保管制度が創設されるまでは上記の①と②のみが利用されてきました。

 そしてどちらを使うにしても遺言者は不便さを感じていました。

 そこで登場したのが昨今、施行された制度の「遺言者保管制度」となります。

 主としては自筆証書遺言を柱として公正証書遺言の利用しやすいところを掛け合わせた制度としてこの制度は生まれました。

自筆証書遺言(自己保管型)

 自己保管型の自筆証書遺言のメリット、デメリットとはどのようなものでしょうか? 

 メリットは以下の通り

①手軽である。 いつでも書き直しができたり廃棄できたりできるので何よりもこのメリットが一番である。
②他者の関与を受ける必要がない。 ただし、しっかりとした知識を身につけて遺言書のルールを守らないと遺言書が裁判所等に否定されることがある。
 遺言書作成は秘匿性を高めるには誰にも関与させないことが一番の方法である。
※ しかし、このメリットもデメリット背中合わせで無効事由を指摘する者がおらず裁判所等で否定されることがある。

 自筆証書遺言(自己保管型)のデメリットは以下の通り

①遺言を執行してくれるもの(遺言書を開封してくれる者)が必要 ただし、遺言書が発見されなければ元も子もないため誰かには存在を伝える必要がる。
②検認が必要 家庭裁判所にて検認(端的に言えば「遺言書の証拠保全」)が必要となる。
※ ちなみに遺言書保管を法務局で保管する制度を使っていれば「検認」は不要

 以上からわかる通り、自筆証書遺言は他人を介さない分自由度は高いが法律になれてない一般人などはリスキーな遺言となる。

公正証書遺言

 公正証書遺言のメリットは以下の通り

①公証役場において公証人の関与を受けることができる 公証人が関与してくれるのでほぼほぼ間違いない(ただし、保証してくれるわけではない)
②検認が不要 公証役場で保管しているため改ざん等の危険性が極めて少ないため
③遺言書の要式、内容が無効になるかどうかの判断は自分で学び実行することになる ただし、こういった問題があるときは国家資格者である
1.弁護士
2.司法書士
3.行政書士
の専門家を利用し遺言書の作成の原案を一緒に作成してもらうことで解消できる

 公正証書遺言のデメリットは以下の通り

①手数料がかかる 遺産の多寡によってかわってくるので高額になればなるほど手数料が高くなる
②公証人との打ち合わせなど時間がかかり手間がかかる 公証人によって簡単な確認をしてくれるので見方によってはメリットとなることもある。
③証人を2人以上立ち合い 近親者以外(ここでは詳しく述べないが条文で証人の細かく欠格事由が定まっている)を口の堅い人間を探さなければならない。

 お金や時間に余裕があり、信用できる人が必要などいろいろな面でコストがかかる。

 ただし、法律のプロフェッショナルの公証人などが関与してくれるので後々無効となることがほとんどなくまた、銀行にもよるが原則として銀行において利用できる遺言書であり社会的に信用力の高い遺言書となる。

自筆証書遺言書(法務局保管型)

 ここで法務局保管型についての説明します。

 自筆証書遺言書(法務局保管型)のメリットは以下の通り

①手軽である。 いつでも書き直しができたり廃棄できたりできるので何よりもこのメリットが一番である。
②他者の関与を受ける必要がない。 ただし、しっかりとした知識を身につけて遺言書のルールを守らないと遺言書が裁判所等に否定されることがある。
 遺言書作成は秘匿性を高めるには誰にも関与させないことが一番の方法である。
※しかし、このメリットもデメリット背中合わせで無効事由を指摘する者がおらず裁判所等で否定されることがある。
③法務局が保管してくれる 公的機関が安価な手数料で長年預かってくれるので手軽に利用できる。
 親族の誰かに遺言書の保管の件を伝えておけば遺言の内容を知られることなく存在だけを認知させることができる。

 法務局での自筆証書による遺言書の保管制度を、どのような人が利用するべきなのか、ここでご紹介します。この制度は、公正証書の遺言書を作成する全段階として利用するか、あるいは費用をなるべくかけずに遺言書を用意したい人に最適だと言えます。

 自筆証書遺言書(法務局保管型)のデメリットは以下の通り

①遺言書の要式、内容が無効になるかどうかの判断は自分で学び実行することになる ただし、こういったときには国家資格者である
1.弁護士
2.司法書士
3.行政書士
の専門家を利用し遺言書の作成の原案を一緒に作成してもらうことで解消できる

 ここで感じてもらいたいのは自筆証書遺言書(自己保管型)のリスクが減少していることだ。

 そして、メリットも増加している。

 ただし上記のデメリットで書いたように遺言書作成の専門家に依頼することが必要となる(自分で学んで作成することも可能だが遺言者の死後、無効となることがある)

遺言書保管制度をとりあえず利用してみるのも可能

 遺言書保管制度の保管申請の手数料は3,900円であり、とても安価で利用しやすい制度です。

 何度もやり直しがきくのでとりあえず使ってみることも可能です。

 公正証書は比較的効果で手間がかかるため最終的に公正証書遺言を作成するための原案を自筆証書遺言で法務局に保管してもらう形にすることもできます。