5-4-1.申請後保管状態でできること、しなければならないこと

遺言書の保管後にできること

 遺言書保管申請後保管状態で、できることやしなければならないことを見ていきたいと思います。

 遺言書の保管がされた後に遺言者として生じる義務や、保管されたからこそできることがあるのです。 

 まずは、以下ひとつずつ確認していきましょう。

保管後に「しなけらばならないこと」

 申請書が受理され保管されているのにまだしなければならないことがあるなんてと驚かれるかもしれませんが実際にしなければならない義務はあります。

 ただし、そんなに難しい話ではありません。 

 遺言書保管所で遺言書を保管してもらった遺言者は、その氏名や住所等に変更があったときは、その変更を法務局に届け出なければなりません(政令3条)。

 これは、遺言書保管後における遺言者の義務なのです。

保管後に「できること」

 遺言書保管所での遺言書の保管が開始された後は、遺言者はその遺言書を閲覧したり、その保管を撤回したりすることが可能です。

 また、

遺言者本人ではなく、たとえばその相続人が

・遺言者の死後に

・遺言書を閲覧したり、証明書(遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書)の発行を受けること

で、自らに関係する遺言書の有無やその内容を知ることが可能になります。

 特に証明書(遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書)は大変に便利です。

(ただし、上記の枠内の要件等には十分気を付けてください。)

 これらの発行を受けることで、公正証書の遺言書で認められていた、いわゆる「遺言検索」が、自筆証書の遺言書でも可能になったと言えるのです。

保管申請後、住所等の変更事項は届け出る

 遺言書が管轄法務局に保管されている場合に、遺言者の住所等に変更があった際は、その旨を管轄法務局に届け出なければなりません。

変更届出が必要な場合

 遺言書は、遺言書が管轄法務局に保管されている場合において、次の事項に変更が生じたときは、すみやかに、その旨を遺言書保管官に届け出なければなりません(政令3条1項、省令30条参照)。

なお、変更届には手数料はかかりません。

・遺言書の氏名、出生年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)

・受遺者の氏名又は名称及び住所

・遺言執行者の氏名又は名称及び住所

・遺言者の戸籍の筆頭に記載された者の氏名

・民法781条2項の規定により認知するものとされた子等の氏名及び住所など(省令11条5号参照)

遺言者(申請者)本人の情報のみならず、

・遺言書に記載されている受遺者(遺言によって財産を取得する者)

・遺言執行者(遺言内容を実現していく者)

・戸籍の筆頭者(夫か父の場合が多い)

・認知する者とされた子等

の情報の変更もあり意外と盲点なので注意しておいてください。

変更届をする者・届出の仕方

 遺言者(又はその親権者や成年後見人等の代理人)が届出をします。

 変更届出は、どこの法務局に対してもすることができます(政令3条2項)。

 また、変更の届出は郵送で行うことも可能です。

 変更届出をするには法務局に連絡を入れ、その予約をしましょう。

(保管番号等質問される可能性があるので連絡の際は申請時に受領した保管書を用意しておきましょう)

提出が必要な書類

 変更を届け出る際は、届出書と次の添付書類を提出します(政令3条3項、省令29条、30条2項)。

・遺言者の氏名生年月日住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)がかわった際は、その変更が生じたことを証明する書類(住民票等)

※ 遺言者本人以外の氏名や住所等に変更が生じた場合は、それを称する書面の提出は不要(他人の住民票などは取得できないのが原則)

・遺言者の戸籍の筆頭に記載された者の氏名が変わった際は、その変更が生じたこと証明する書類(住民票等)

・法定代理人によって届出をするときは、戸籍謄本その他その資格を証明する書類で作成後3月以内のもの

・届出人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証のコピー(原本と相違がない旨を記載)

以下、実際のひな型なので参照してください。

 なお、書類のPDFなどはインターネットに上がっていますのでダウンロードしてお使いください。

遺言者は、保管された遺言書を閲覧できる

 ここからは遺言書が法務局で保管された後に「できること」について解説します。

まずは、遺言者による遺言書の閲覧についてです。

遺言書の閲覧(原本)

 遺言者本人は、その申請に係る遺言書が保管されている法務局(これを「特定遺言書保管所」といいます)に対し、下記の請求書を提出し、手数料を納付すれば、いつでも遺言書の閲覧を請求することが可能です(法6条2項3項)。

 遺言書の原本を閲覧する際の手数料は、1、700円(収入印紙で納付)です。

 なお、この閲覧の請求は、遺言者が遺言書の保管を申請した法務局自ら出頭して行わなければならず、その際には本人確認がなされます(法6条4項、5条)。

 ※(変更届け出とは異なりどこでもできるわけではない)

 本人確認の後、法務局職員等の面前で、遺言書を閲覧することが可能になります(省令22条)。

 ※閲覧の請求をする際は、事前の予約が必要です。

 ※請求書と本人確認書類等を持参します。その他の書類は不要です。

遺言書保管ファイルの記録の閲覧(モニターによる閲覧)

 遺言書保管所では、遺言書の情報がデータでも管理されていますが、遺言者であればこのデータ(正確には、遺言書保管ファイルの記録が表示されたもの)の閲覧請求も可能です(政令4条1項)。

 手続はほとんど上記の「遺言書の閲覧」と同様です。

違いは、特定遺言書保管所以外の遺言書保管所でも閲覧の請求ができること(政令4条2項)と、手数料が1,400円であることです。